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ブライダルコード
「もうお見えにならないかと思っていましたよ」
思い掛けず本音が口をついてしまい、男──ジョウはしまった、と 冷や汗を流した。
案の定、女──マリイは一瞬ポカンと戸惑いをみせ、それから、あぁ、と笑顔を作ってみせた。
「すみません、大切な人を亡くされたばかりだというのに不躾で」
お気になさらず、と微笑みを浮かべ、その先でほんのりと儚さを醸すマリイの表情に、ジョウは背筋が冷える程の美しさを感じた。
やはり、この人しかいない。
ジョウはマリイの瞳をじっと見詰めて、握った拳に力を込めた。
セスナの窓の外からはすっかり景色が消え、遙か下に草原が広がっていた。
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