速度

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想像よりもずっと綺麗に整頓された健吾の部屋で、帰りにコンビニで買ったお酒を軽く飲みながら2人で土曜のプランを練ることにした。 先にシャワーや洗濯など面倒なことを済ませてから決めようということで、健吾が先にシャワーを浴びることになった。  あまり物色するのも申し訳ないので、大人しくソファーに座って待っていた。 「最近の大学生」なら、こういう隙間にSNSをやって時間を潰すんだろうか。  本棚くらいならいいだろう、と本を漁っていると、私のスマートフォンに悠太からメッセージがきた。 「2人で隣の県の温泉行くんだって?俺あそこのお菓子好きだからお土産頼むわ!」   背筋が寒くなるのを感じた、速すぎる。 さっき健吾に提案されたことをなぜ悠太がもう知っているの? 健吾は誰にも相談していないと言っていたし、さっきのカフェに知った顔はいなかったはずだ。 私たちが気づかないところで話を聞かれた?そうだとしてもなんでもう悠太が知っている? 拡散? 現代社会における情報の伝達速度?   頭の中をいろんな思案が高速で回るのがわかった。が、それらしい答えは出なかった。 少し気味が悪いので、悠太には返事をせず、健吾にもこのことは言わないでおこうと思った。   健吾がシャワーを終えたので、いつもより少し熱めのお湯で長めにシャワーを浴びさせてもらった。 私がシャワーから出ると健吾はサッパリした様子で旅行サイトを見ていた。 私もまだモヤモヤを抱えたまま健吾の隣に座り、土曜の予定を2人で細かく決めていった。
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