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「チューリップって、えっちだよね!」
仕事から帰ってきて、玄関で出迎えていた同棲相手の第一声は、「おかえり」でも何でもない。いっつもいっつも、奇妙で突拍子のないものばかりだ。
確か昨日は、「猫ってSっ気があるから、どっちかっていうとタチの方が似合ってると思うの。」だったかな。その前は確か、「バラ肉はあるけど、ユリ肉はあるのかしら。桜肉はあるんだけど。」だったっけ。なんか、くだらなくって、平和だなって思う。
「チューリップ? ……どんな謎掛けなの?」
「へっへー、当ててみな。」
少し悪びれて、歯を見せ笑う彼女は、なんだか子どもっぽく見えて、とっても愛らしい。
チューリップ……チューリップねぇ……
咲く時期は春よね。確か花言葉は、「理想の恋人」。それと、「思いやり」、だったかしら。三人から求婚された少女が、三人ともを思った末、誰か一人に絞ることは出来ないと、花に姿を変えてしまった……オランダの民話だったわよね。って、そんなの彼女が知ってるわけない、か。答えはきっと、もっと単純な……
チューリップ……チューリップ……
「答え合わせ、する?」
見兼ねた彼女が、助け舟を出す。
こういう、発想力を問うような問題は苦手だ。知識をつけるのは楽しいのだけれど。
「お願いするわ。」
「そう。じゃあね、目ぇ瞑ってて。」
彼女の言う通り、瞼を閉じる。目の前にいる彼女に、いつ何をされるか、それを探るのに、目に頼る事ができない。そんな事実が、胸を高鳴らせる。
いや、本当のことを言うと、何をされるかはちょっと検討がついていた。彼女が目を瞑るよう要求するときは大抵………
不意に、ほのかに甘く、落ち着く香りが、私に迫る。そして同時、私の唇は、柔らかい彼女のそれに塞がれてしまう。
なるほど、リップ……唇に、ちゅー。だから、ちゅー、リップ……
「…どう?」
ああ、離れてしまう唇が、名残惜しそうに引き合う。
「思ったよりずっと、しょーもなかった。」
彼女が可愛いもんだから、わざと、意地悪く、素っ気なく言ってみる。
「えー、ひっどい。ひどいから、もう一回……」
再び、彼女の甘いのが、私の脳を支配する。
しょーもなかったけど、だけど、
段々と激しくなって、音も吐息も、二人一緒に増していく。
……確かに、えっちだな。
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