記憶

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今日、学校に行きたくないのには理由がある。今日は講話がある。 何処からか人が来て話をするものだ。3年生は最後の方暇なのでこういったものが多くなる。 だが、普通の講話ならいい。今日は『いじめ』についての講話なのだ。 自分がやられているからこそ、聞きたくないし、周りのいじめっ子たちは、それを楽しそうに見ているのが本当にウザイ。 これが夢ならばいかなくてもいいが、そういう訳にも行かないので、私は気の進まないまま、学校に向かっている。 『多分これ、夢だと思うけど・・・。』 そう、心の中で歌奏(しいな)は言う。歌奏は、もう一人の私。私の唯一の心が通じる者だ。 「どうして?」 『だって、もう学校着いてるもん。』 いつもなら、15分はかかるはずの学校への道のりがわずか5分。 確かに、これを夢と言わずして何と言おうか。 「はぁ。」 深くため息を吐いた私は、重い足取りで門を潜った
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