序章 100時間でも足りません!

1/1
前へ
/27ページ
次へ

序章 100時間でも足りません!

 土曜日の午後。駅前の書店。  文芸書コーナーで本を見てたら、    「ぼっちなの?」    いきなり声をかけられた。    これって挨拶?    右隣に聞き覚えのある声。    一年一組のクラス委員。クラスカーストのトップ、高城寺彩月(こうじょうじさつき)さん。    一メートル九十センチ近い身長で六十センチの僕のこと、見下ろす。    文芸書のコーナー。ふたりで並んで立った。    「浜島、石原は遠くだし、休みだからって地味な者同士、慰めあうこともできないね。    気の毒なこと。    日下部優馬(くさかべゆうま)君。    地味で勉強ができるわけでもないし、スポーツは団体競技の足手まといだし、詩なんか書いてたって、だれも楽しくないわけ。    君って人が楽しくないことするの趣味なわけ?    やめなよ」    「ちょっと待って。    会ったばかりなのに、そんなに悪口言わなくたっていいでしょ」      ぼくって力なく反論。    もちろん高城寺さん、ぜんぜん聞いてくれない。  「しかたないでしょ。    言いたいことありすぎて、百時間かかっても終らないから・・・    今日って七草多賀子(ななくさたかこ)さん、一緒じゃないの?    クラスにいない。    学校にいない。    世界でたったひとり、君の相手をしてくれる心やさしい女性。    君のフィアンセさんだったよね!」  ぼくのこと、ジーッと見下ろしてくる。  ぼくって力ないまま答える。    「いま、入院してるから・・・」  これがすべての始まり。  ぼくのフィアンセ。  とってもステキな七草多香子さん。  満100歳。  ただいま、入院中!
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加