26人が本棚に入れています
本棚に追加
序章 100時間でも足りません!
土曜日の午後。駅前の書店。
文芸書コーナーで本を見てたら、
「ぼっちなの?」
いきなり声をかけられた。
これって挨拶?
右隣に聞き覚えのある声。
一年一組のクラス委員。クラスカーストのトップ、高城寺彩月さん。
一メートル九十センチ近い身長で六十センチの僕のこと、見下ろす。
文芸書のコーナー。ふたりで並んで立った。
「浜島、石原は遠くだし、休みだからって地味な者同士、慰めあうこともできないね。
気の毒なこと。
日下部優馬君。
地味で勉強ができるわけでもないし、スポーツは団体競技の足手まといだし、詩なんか書いてたって、だれも楽しくないわけ。
君って人が楽しくないことするの趣味なわけ?
やめなよ」
「ちょっと待って。
会ったばかりなのに、そんなに悪口言わなくたっていいでしょ」
ぼくって力なく反論。
もちろん高城寺さん、ぜんぜん聞いてくれない。
「しかたないでしょ。
言いたいことありすぎて、百時間かかっても終らないから・・・
今日って七草多賀子さん、一緒じゃないの?
クラスにいない。
学校にいない。
世界でたったひとり、君の相手をしてくれる心やさしい女性。
君のフィアンセさんだったよね!」
ぼくのこと、ジーッと見下ろしてくる。
ぼくって力ないまま答える。
「いま、入院してるから・・・」
これがすべての始まり。
ぼくのフィアンセ。
とってもステキな七草多香子さん。
満100歳。
ただいま、入院中!
最初のコメントを投稿しよう!