最終章 真夏の恋はヨコスカで

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 たくさんの食材や飲み物などを持ち、『ひまわり』御一行様が一般の観光客に紛れて猿島へと渡る。  桟橋からバーベキューができる浜辺に着くと、バーベキュー開始の時刻を誠治が告げる。  水着に着替えて海水浴と洒落込むのも良し。浜辺でビール片手に日光浴をするのも良し。はたまた、旧日本海軍の要塞であった、島の深部にある遺功を散策するのも良し。  誠治が告げた時刻までは、それぞれ自由行動。かくして、大人の遠足の幕が切って落とされる。  誠治をはじめ『ひまわり』の面々と地元の友人達は早速水着に着替えて浜辺へと繰り出す。  横須賀に縁の薄い亮と剛は他の観光客に紛れて、島のガイドを追うように島内の散策に出発して行く。  派手な柄の海水パンツに黒いTシャツ。サングラスをかけた誠治が貸出用のデッキチェアーに横たわり、夏の太陽を独り占めしている。  そこに缶ビールが入るクーラーボックスを抱えた龍一が通りかかる。 「冷えたビールに、冷えたビール。冷えたビールは如何ですか~?」  どうやら売り子の真似をしているようだ。 「ビールしかねーのかよ」 「どうせビールしか飲まないんだろ?」 「ま、そうだけど」  龍一が砂浜にドカッと腰を下ろし、持っていたクーラーボックスも砂浜に置くので。誠治は起き上がって缶ビールを1本手に取る。 「やっぱ、猿島はいいよな。ここだけ違う時間みたいだ」 「砂浜に時計を埋めちゃえ。みたいな歌があったよな」 「あったあった。海の向こうでミサイルが飛んでも気にしない。みたいな」 「まさにそんな感じだな。あの曲って、前回オリンピックやった場所が舞台だろ?」 「ああ。あんなタイトルだからな」 「それが去年、すぐそこでやってんだもんな、オリンピック」 「まぁ、俺達には関係ないけど」 「まさにあの曲の心境だ…… 『Sarushima ’22』って感じ?」 「『ま』しか合ってねーじゃねーか」  そう言って龍一がその曲を歌いだす。 「おー!マリっぺ!」  サングラス越しの誠治の目に。近寄って来る真理恵の姿が映る。d144e6a8-1e56-412e-82bf-cb072e111012横須賀写真紀行⑨ https://estar.jp/novels/26045016/viewer?page=9 https://ameblo.jp/isozaki-kaoru/entry-12575421482.html
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