最終章 真夏の恋はヨコスカで

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「俺、やっぱこの街が好きなんだと思う。アマチュア時代から何度か来たこともあったけど、その当時は横須賀の良さがわからなかったな。  このへんの他の街と一緒で、ベッドタウンのひとつとしか見ていなかったから。でも、この街で目覚めて。セージとか、この街の人達に触れて。文化に触れて。  未来の── この時代の便利さと引き替えに、都会で暮らす人達が忘れてしまった日本人らしい他人(ヒト)を思いやる気持ちとか、持成す精神とか。残すべき大切なものがたくさんあることを知った。  俺はずっと、この街で暮らして行きたい。でも…… マリーちゃんにも守るものがたくさんあって。あの横浜の家から離れるわけにはいかないんだよね」  その言葉に、光の横顔を見つめたままで真理恵はクスッと笑う。 「それって、プロポーズだと思っていいの?」 「う~ん…… そうなのかなぁ」  横須賀の街並みを眺めている光の横顔が赤いのは、陽焼けのせいなのか、暑さのせいなのか。はたまた…… 「そうねぇ…… 私も好きよ、横須賀。生まれも育ちも── それだけじゃなくて、ウチは先祖代々横浜だから、もともと横須賀に親近感はあったのですけど。  横浜のライブハウスで『ひまわり』の人達と出会って。こうしてセージさんやリュウさんと仲良くさせてもらって。もう、半分横須賀市民みたいな感覚よね。  それに何より、横浜と横須賀って近いじゃない?快特(かいとく)(※)に乗っちゃえば数十分よ。都心に出るより近いじゃない。  ヒカリさんの気持ちは嬉しいけど、今は今のままでいいんじゃない?こうしてハーバーの店長さんに良くしてもらっている以上、これからも横須賀でのライブも増えそうだし。  先のことはまた、その時に考えましょ」 (※:エアポート急行、特急の上の、京浜急行における最上級の優等種別。横浜から横須賀中央まではわずか4駅、30分ほど) 「そっか…… そうだよね。んじゃ、そんな感じで、これからもよろしく」
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