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第一章 タイムトンネル
金曜の夜。ここは横須賀。
京急の横須賀中央駅から米軍基地やドブ板通りのあるほうへ伸びる大通りから、2本離れた路地の片隅にある老舗のライブハウス『harbor view』。
一度、老朽化のため地上のビルとともに建て替えられたものの。その地下の構造は以前とあまり変わりなく、設備だけが一新されて今でもライブハウスとして営業を続けている。
金曜の夜とは言え、地上の街を行き交う人はまばらだ。都心まで約1時間で行ける、超速い優等列車が停まる駅の近くだと言うのに。
駅前には数軒のラーメン屋や居酒屋。それにパチンコ店などが並ぶが、どこも閑古鳥が鳴いている。
おかげで日本人よりも、基地で働く米国人のほうが多いのではないのか?という錯覚にさえ陥るほどだ。
そんな寂れた街でライブの動員など見込めるはずもなく、3組のタイバンライブは盛り上がりに欠けるまま終了。そして前の2組のバンドは自分達の演奏が終わると、すぐに帰って行ってしまった。
今は最後に演奏したロックバンド『ひまわり』の5人だけが店に残り、そして灯りの戻った客席に打上げの準備が始まる。
「あ、店長。お疲れッス!ありがとうございました!」
現れた大柄で長髪、そして無精髭の男性に向かって、客席のほぼ中央にバー営業用のテーブルを用意していたボーカルの田部井 誠治が頭を下げる。
「こっちこそありがとね。今日も良かったよ。どうして売れないんだろうね、『ひまわり』。不思議だよ」
何気に酷いことを言う……
「ゴーの奴、今日が最後なんだって?」
ステージ上でエレキギターのシールドケーブルを器用に巻いているギターの新村 豪を見ながら店長が言う。
「ええ、そうなんです。田舎の親父さんが倒れたそうで。地元に戻って家業を継ぐことにしたそうです」
「そっかぁ…… 寂しくなるなぁ。そんな大切な最後の舞台に、ウチを選んでくれたのは嬉しいけど」
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