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それぞれ楽器の撤収作業をしていた『ひまわり』のメンバー達が、次々とステージから飛び降りて誠治の元へとやって来る。
メンバー5人と、店長をはじめ『harbor view』のスタッフ3人。計8人が客席ほぼ中央のテーブルを囲み、缶ビールを手にしてプルタブを引く。
「それでは皆様。今日もお疲れ様でした。ハーバーの皆さん、いつもありがとうございます。では、ささやかながらナカ打ちを。令和最初の『ひまわり』ライブの成功を祝して…… 乾杯!」
誠治の音頭で打上げが始まる。
「ゴーちゃん、お疲れ。本当に今までありがとね」
ギターの豪は、大学生と言われても通用するのではないか。と思えるほど見た目が若々しい。その豪に誠治が歩み寄り、手にしている缶を合わせる。
「こちらこそ、ありがとうございました。済みません。俺の身勝手で、こんな形で脱退になってしまって」
「その話はもういいって言ってるだろ?」
「『ひまわり』もそうだけど、ウチの会社としてもゴーに抜けられるのは痛手なんだよ」
豪は『ひまわり』でギターを弾く傍ら、工業系大学のひとつ先輩であるドラムの酒井 亮とともに音響機材の会社を営んでいる。
「そうだよな。トールちゃんひとりで大丈夫なの?」
そう訊ねるのはベースの林田 龍一。
「まぁ、今はそんなに忙しくないから。なんとかなるでしょ」
「セージさん、コーサクさんを加入させる話って、どうなったんですか?」
誠治に訊ねるのは紅一点、キーボード担当の今沢 真理恵。
真理恵が口にしたコーサクとは、フリーギタリストの沼部 耕作のこと。田園風景の中で鍬を片手に── そんな景色が似合いそうな名前だが、実はビジュアル系でハード好きなギタリスト。
「ゴメン、マリっぺ。あんまり進んでない。っつーか、断られた。サポートとして呼んでもらうのはいいけど、今さらどっかのバンドに属したくないって」
誠治が詫びるように頭を下げながら言うと、みんな「そうだろうな」という感じでウンウンと頷いて納得する様子。
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