第一章 タイムトンネル

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~ロックバンド『ひまわり』について~ ボーカル:田部井(たべい) 誠治(せいじ) 通称「セージ」 ギター:新村(にいむら) (ごう) 通称「バジル」 ベース:林田(はやしだ) 龍一(りゅういち) 通称「リンデン」 ドラムス:酒井(さかい) (とおる) 通称「ルー」 キーボード:今沢(いまさわ) 真理恵(まりえ) 通称「マリー」 横須賀をはじめ、横浜や湘南など主に神奈川県内で精力的に活動している、一応メジャーレーベルからCDもリリースしているロックバンド。 ----- 「まぁ、先のことはまた考えるとしてさ。ゴーちゃん、今日は朝までイケるんだろ?俺も付き合うからさ、とことん飲もうゼ!」  無精髭の店長がビールの缶を高々と挙げると、他のメンバーも「おー!」と勝鬨(かちどき)を挙げるように続く。  その時である。  客席から見ると腰くらいの高さになっているステージの右側。袖の奥あたりに閃光が走り、漏電するようなビビビビッという大きな音がする。  その音に真理恵が思わずキャッと悲鳴をあげ、両耳を押さえてしゃがみ込んだほどだ。  音と光のほうを見てみると…… なにやら、わずかばかり煙のようなものが宙を漂っているようにも見える。  電気機器の短絡(ショート)に因るものであれば、店のブレーカーが堪えられずに全ての灯りも落ちるはずなのだが。照明だけでなく、店内の電気機器は全て正常なように感じる。  それでも見えた煙に、万が一火の手でも上がっていては洒落にならん!とばかりに『ひまわり』の男連中とharbor viewのスタッフがステージに飛び乗る。 「おい!大丈夫か!」  なんとそこには。白いTシャツにインディゴのジーンズ姿の男性がうつ伏せに倒れていたのである。  誠治が駆け寄り、肩を抱いて身体(からだ)を半回転させて仰向けにする。触れた身体(からだ)は温かいし、顔の血色も良さそうだ。  痩せ型で金色に近い短い茶髪の、見た感じ20代から30代くらいの若い男性である。 「おい!しっかりしろ!」  誠治が慌てて頬を数回叩くと、その男は小さく「う~ん」と唸るような声を上げてこめかみを動かす。どうやら最悪の事態には陥らなかったようだ。
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