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あいさつって気持ちいいでしょうか?
「隣に引っ越してきた安藤です。」
突然やって来た訪問者はインターホンごしにそう言った。カメラ機能のついていない僕のインターホンは声を届けるだけのただのトランシーバーだった。何の用か分からない僕は玄関までそれを確認しにいかなければならなかった。
「はい、今開けます。」
外交用の作った声で返事をする。玄関を開けるとそこには大学生くらいの女性が包みを持って立っていた。ある程度可愛くて、身なりもきちんとしている。主人公とはいかなくてもサブキャラくらいにはいそうなタイプだ。モブキャラの僕からすれば随分といい身分だ。
「隣の311号室に引っ越してきた安藤千尋です。あの、これ良かったら貰ってください。お近づきの印です。ご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが、何とぞよろしくお願いします。」
定型文のようなセリフで持っていた包みを丁寧に差し出してくる。
「どうも。緑川慎吾です。」
僕はそれだけ言って包みを受け取った。それ以上会話が続くことはなく、お互いの苦笑いでその場は解散となった。
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