1人が本棚に入れています
本棚に追加
ご近所付き合いは難しいでしょうか?
「でも、そのお隣の緑川さんが気難しくって。あいさつしてもなかなか返してくれないの。どうすればいいのかな?」
私は目の前に座ってアイスコーヒーを飲む彼女に向かって近況報告兼お悩み相談をしていた。
「千尋は気にしすぎなんじゃない?お隣さん一人くらい仲悪くたってどうってことないでしょ。」
興味なさそうに話す彼女に自分の悩みの真剣さを目で訴えかける。それでも彼女はやれやれといった感じでまともに取り合ってくれない。私は彼女の持っていたアイスコーヒーを取り上げて言い放つ。
「だってその人以外とはちゃんと近所付き合い出来てるんだよ。管理人の藤田さん、反対側のお隣の宮下さん、ごみ捨て場でいつも会う遠藤さん。みんな会えば話してくれるよ?緑川さんとだけ仲良くないなんて嫌じゃない。」
彼女はアイスコーヒーが取られたのが嫌だったのか、つまらなそうに
「あーそ。」
とだけ答えて、またアイスコーヒーを飲み始めた。私はちょっとムカついて嫌味ったらしく言ってやった。
「ちなみにそのアイスコーヒー、真広が相談にのってくれるって言うから私が買ったんだですけどー。アドバイスの一つくらいくれても良かったんじゃない?」
彼女は痛いところを突かれて、居心地が悪くなったのか急に用事を思い出したと言って荷物をまとめて出る準備をしだした。まあ、いつものことではある。私もそれに合わせて荷物をまとめ、この場を離れることにした。別れ際、彼女が珍しく真剣に私の方を向いて言った。
「そういえば、千尋。お隣さんと仲良くなるために頑張るのは止めないけど、気をつけなよ。世の中、いい人だけじゃないんだし。ちひろのことを一番に考えるんだよ。」
彼女はなんだかんだ私の心配をしてくれる唯一無二の親友である。
最初のコメントを投稿しよう!