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カンッ。
見事に的を外れた矢が、地面に落ちる。
受験勉強の気分転換に部活に顔を出したはずなのに、気持ちは墜落寸前の低空飛行だ。
圭太、同棲するって言ってた……。
思った以上にショックを受けている自分に驚く。日向子は顔をおおって、大きくため息をついた。
ほんまに、彼女おったんや……。
わりと近い距離にいたはずなのに、彼女がいたことに気づかなかったなんて。二重にショックだ。
推薦入試のため、早々に東京の大学への進学が決まっている圭太だが、それと同時に同棲することを了承した“彼女”とは、どんな人物だろうか。
ばったり道端で出会ったらイヤだな……。
日向子の第一志望は東京の女子大。地元を離れて進学しようと思ったきっかけは、幼馴染が東京に行くという話を聞いたからだ。
ずっと一緒にはいられないと思いながら、告白する勇気もなく、それでいて諦めることもできず、少しでも近くでいたいという不純な動機で進学先を選んだ。
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