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怒濤の一日だったが、仕事的にはいつも変わりなかったので、定時には帰れた。
ロビーで別の部署の同期の子たちと出会い、
「うそっ。
行きたい、その店ーっ」
と新しく出来た中華の店の話で盛り上がっているところに、遥久が通りかかった。
お疲れ様ですーっ、とイケメン課長に笑顔で挨拶するみんなに、遥久は軽く頷く。
やっぱり、若いのに貫禄あるな~と思い、見ていたのだが、遥久は洸の方は見もせず、素知らぬ顔をしている。
……だから、本当に私は貴方と結婚するんですか?
と思ったとき、遥久が通りすがりに、ぼそりと言ってきた。
「……早く帰った方がいいと思うが」
その言い方に、ぞくりとして、振り返る。
だが、遥久は、チラとこちらを見ただけだった。
通りすがりに、他人に聞こえない程度に、さりげなく耳許で囁く様子はまるで、手だれのスパイだ。
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