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「それとこれとは別でしょうがっ」
「そうだけど、今回は一人じゃなかったし」
「一人で来ればよかったじゃんっ……て、
そうなるとどのみち協会じゃ間に合わないから、結局わたしか…?
あぁっ、なんかものすごく理不尽な気がする!」
頭を掻きむしらんばかりの叫びとともに、狐さんが私たちの前で止まった。まるい灯りが勢いの余韻でくるくると揺れている。
それがただの提灯でないことは、
私もすでに気づいていた。
形が、光り方が、こちらの手元とまるで同じだ。
はたして、尻尾も気も逆立てたままの狐さんは、
無遠慮なほどにずいと片手を突き出して。
「ほらよっ」
「うん。助かった」
横宮さんの左手が、新しい鬼灯の茎を掴む。
引き換えて、もう光らない物が狐さんの手に。
私と重なっていた右手がするりと離れて、
辺りはやっぱり、
私たちなど気にしない祭りの様相。
「栗ちゃんも。
これで、少しならお祭り見て回れるよ」
少しなら、とつけたのは、
この人なりの牽制だろうか。
深い闇に笹の音揺らめかす七夕祭りは、
夜通し続いてしまいそうな賑わいだから。
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