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「悪い? っていうか、りーちゃんと呼ぶなって何回も言ってるんだけど!」 「だってさあ、選択は理系だし、 見るからに現実主義って感じだし。 あたしは、そうなるなら栗のほうかと思ってたな」 マイペースな指先が、 しかめ面をひらりとかわして私を指した。 やさぐれた眼がすかさず追ってきてついひるむ。 一日を締めくくる六時間目が、 まさかこんな議論を巻き起こすとは。 「私は……そういう考え方もあるんだなぁって、 結構面白かったけど」 「なんでそうなるのよ! もっと自分の考え貫きなさいよ!」 これまで空に向けられていた叫びが、 今度は私を直撃する。 「そっかー、うん。 栗ってこういう子だったわあ」 わざとらしく腕を組んで、 美沙ちゃんが悟ったような声を出す。 「い、いいでしょ、人それぞれで。 美沙ちゃんこそ、こういうのどうなの?」
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