後章

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水音ばかりの暗闇を、 ほの白い流れがさぁっとすぎる。 左から右へ、瞬きもできない一瞬だった。 対岸の雑踏が歓声へと変わる中、影も霞んだ橋をくぐり、かすかな蛇行を見せながら下流へと光が続いていく。 行く先が見えなくなれば、ゆったりとした星の川が私の目の前を流れていた。 そう──星だ。水ではなく。 砂粒よりも細かくて、すくい上げれば指の間からすべてこぼれてしまいそうな、そんな無数の星々が、ふんわりと白く光っていた。 まさか、と思う。 どうしてだろう。今まで考えつかなかった。 「──もしかして……ここが?」 「そうよ。 7月7日だけ入れる、天の川のほとり」 艶やかな毛並みを頬に触れさせて、 黒猫さんが告げる。 せせらぎの音は絶えず、私は流れに一歩近づいた。 覗きこんでもこちらの姿は映らない。つま先が触れただけで星空へ落ちてしまいそうだ。
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