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両手の鬼灯に眼を落とすと、
赤い光が眩しく沁みた。
星空にちょっと背を向けて、その灯りが弱ってはいまいかと顔の高さに掲げてみる。
そうしたら、ふたつ分の灯りにちょうど人影が照らしだされた。
「ええ。間に合いましたよ」
「横宮さんっ!」
私よりも早く、実に早く、
黒猫さんが高い声を上げた。
そのままあちらの肩に飛び移るんじゃないかというほどの声だった。
さすがにしなかったようだけれど。
「間に合ったって、橋、架けたんですか」
消えた時同様の唐突さで現れた人に、
まずは鬼灯を返しながら訊いてみる。
「いや、それは僕じゃなくて、
カササギの役目だから」
長い茎をしっかりと受け取って、
横宮さんはいつものように笑うだけだった。
それでも、水際へ歩み寄った後には、
下から上へゆっくり視線を移ろわせて。
ほぅっと、あらゆる言葉の代わりのようなため息が、隣に立つ私に聞こえた。
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