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対岸のお祭りは穏やかに賑わい、
肩の上で猫さんが小さくあくびをする。
眩しい光がひとつ消えて、
より深くなった闇の中を星影が瞬いた。
「前と逆ですね」
そういえばと、気がついて口に出してみる。
「そうだね。
やっぱり、ついてきてもらってよかった」
「じゃあ、こうなるってわかってたんですか?
…いわゆる予備としてついてきてほしいと」
「それは、人聞きが悪いというか……これを断って、“お礼” の誘いがまた後日になったら、僕が立ち会えるかわからなかったし」
ああ、なるほど。
更に言えば、私が隣家にいる時に来るかどうかもわからない。
そっか。この人にとっても一石二鳥だったんだ。
「でも、なんで急に消えちゃったんでしょう。
私、ちゃんと大事に持ってたのに」
「わかってるよ。
一度手を離すと、消えやすくなるらしくて」
「それなのに預けたんですか?」
「あそこで持っていったら、もっと早くに消えて戻ってこられなかったから。──ごめんね、動揺させて」
「う、いえ、あれは私が慌てすぎました」
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