3人が本棚に入れています
本棚に追加
ふたつの星を隔てる天の川は、
この街の夜ではちょっと見えない。
駆け足に追いついた先で門を抜ける。
校門の脇にはさらさらと笹が揺れ、
七夕飾りが色彩豊かに夏風を流していた。
☆
これはどうしたことだろう。
いつの間にか、周囲の私を見る目が不本意な方向へ傾いている気がする。
「──栗ちゃん? どうしたの?」
不意の問いかけに、顔を上げる。
窓際の座卓の向かい側で、横宮さんが箸を止めてこちらの様子をうかがっていた。
「何も? どうぞ、食べてください」
にっこり笑って、私は卓上の物を指し示す。
麦茶のコップがふたつ置かれた中央に、少し大きめの白いお皿。
上には、艶のある醤油だれをまとって、
一口大の砂肝がまだ結構転がっている。
最初のコメントを投稿しよう!