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「いいえ。僕も、滅多に見られないものを見せていただきました」
振り返った横宮さんが、
そつのない声で受け応える。
笑顔にどことなく苦笑がまじるのは、黒猫さんがもうほとんど私の頭に乗っているためだろうか。
さすがに重いというか、この季節では暑いのだけど、柔らかな毛並みが心地良くてついそのままにしてあった。
「さぁて、じゃあお隣さんっ、お祭り回る?
さっき見てないって言ってたでしょぉ、
お礼ついでに、このまま案内してあげる!」
お仕事から切り替えた声が、
次には私を誘いだす。
「え、わぁ、いいんですか…」
つい、ふたつ返事に応じそうになって、
ちょっと隣の人を見た。
同じ鬼灯を持つ人は、
その灯りに少しだけ困った笑みを滲ませた。
何だろう。反対という様子ではない。
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