後章

24/31
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
まなざしで問い返すと、 すぐに意図を察した人が口を開く。 「来るのを待ってからでもいいかな。 もうそろそろのはずだから」 「…来る?」 誰が、と訊き返す必要はなかった。 「あぁーっ!」 帽子が叫びだすような近さで、 甲高い声が耳を打つ。 肩から上が軽くなり、 着地の草音が聞こえたと思うより早く、 視界の隅でちらちらと赤い光が揺れた。 星じゃない。 もっと明るく、小さな提灯にも似た──…、 「なんであんたがこっち側にいんのようっ! 引退済みでしょっ?」 足下から何の遠慮もない声が響いて、それから。 「──こっちの台詞だぁっ! 緊急だか何だか知らないけど、 余計な仕事増やすんじゃないよっ!」 駆け足で近寄ってくる影から、 なんとも馴染みある怒声が返る。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!