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まなざしで問い返すと、
すぐに意図を察した人が口を開く。
「来るのを待ってからでもいいかな。
もうそろそろのはずだから」
「…来る?」
誰が、と訊き返す必要はなかった。
「あぁーっ!」
帽子が叫びだすような近さで、
甲高い声が耳を打つ。
肩から上が軽くなり、
着地の草音が聞こえたと思うより早く、
視界の隅でちらちらと赤い光が揺れた。
星じゃない。
もっと明るく、小さな提灯にも似た──…、
「なんであんたがこっち側にいんのようっ!
引退済みでしょっ?」
足下から何の遠慮もない声が響いて、それから。
「──こっちの台詞だぁっ!
緊急だか何だか知らないけど、
余計な仕事増やすんじゃないよっ!」
駆け足で近寄ってくる影から、
なんとも馴染みある怒声が返る。
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