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はい、と頷こうとすれば、
足下でぱしんと鋭い音が鳴った。
「用が済んだなら帰んなさいよ!
せっかくお祭り楽しめる気分になれたんだから!」
「いって! ちょっ、猫パンチ反対!」
「うるさい! 七夕で荒稼ぐ悪徳よろず屋!
あんたのそおいうとこ嫌いっ」
「ふんだ、その嫌いな奴に毎年大事な依頼しなきゃいけないのはどこの誰だろうねーっ」
「あぁもうっ、その態度むーかーつーくー!」
ぱしぱしと、爪を出さない連打が響いて、
たまりかねた狐さんが太い尻尾を翻す。
星のほとりをあちらこちらへ跳ねる姿が、
影のように二匹分。
見ていたら、
私の中に何か奇妙な感覚が浮かんできた。
「私……前にも見たことありますかね?
あのふたり」
既視感とでも呼べそうな、
どこかもどかしい感じ。
黒猫さんとは初対面のはずだけれど。
「…そう感じるんなら、あるんじゃないかな」
横宮さんは優しい声で、何も否定しなかった。
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