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首を回して見えたのは、
空に呼応してどこまでも流れる白い川。
あとは、影となった両岸だけ。
「渡ってきた橋は…?」
「それなら、カササギが来る前には消えていたよ。明るいうちだけなんじゃないかな」
とっくに気づいていた声で、横宮さんが応える。
早く早くと急かされた薄闇の道程が、
あらためて脳裏を通りすぎた。
じゃあ、対岸にはどこから戻るんだろう。
「やっぱり──あれじゃない?」
すいと指し示されたのは、
星が巡る眼下の川の白い帯。
「あれって、天の小夜橋じゃないんですか」
「そうかもしれないけど、渡れそうだよ」
気楽な返事とほぼ同時に、その光景が目を奪う。
川面に映る影のようなそれの上を、
二匹の姿が横切った。
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