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下からの光に照らされて、
一方は黄色く、一方は黒く。
水を渡る軽やかさが、
こちらからあちらへ駆けていく。
対岸へ行ってしまってから、
ようやく止まった二匹がこちらへ呼びかけた。
まだそこにいるのかと叫んだのが黄色い方。
早くおいでと声を上げたのが黒い方。
それが、なんだかひどく仲良さげで、
私は思わず微笑んだ。
「渡れちゃうんですね。
織姫と彦星のための橋なのに」
「そうらしいね。
…それに、そのための橋なら」
言いながら、お隣さんが空を見る。
吸いこまれそうな夜空では、
はくちょう座の翼を淡紅色が染めあげる。
三秒に一回かぁ。
嘆いていた子の顔と、
どうでもいいと笑っていた子の顔を思い出す。
人の一年は、
星にすればたった三秒なのだろうか。
だとしたら、星たちの三秒の間に、
私はなんてたくさんのことを知ったのだろう。
次の三秒がすぎるまでに、
今度は何を知るのだろう。
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