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「それは……まあ、好きは好きですよ、
嫌いじゃないです。
あ、それよりこれ、本当に上手くできてます?
なかなか火が通らなくて、
ちょっとお水入れて煮ちゃったんですけど」
少し早口に頷いて、
砂肝のお皿を向こう側へ押し出す私。
途端に、横宮さんの顔がぱっと明るくなる。
「うん、ちょうどよく仕上がってると思うよ。
お肉の柔らかみも感じるし、もちろん砂肝本来の歯応えも。そうか、焼くんじゃなくて、煮るようにしたんだね。
炭火の香ばしさも美味しいけど、こういうのもショリショリとした砂肝の食感が活きて良いものだね」
よかった、話が流れた。
そうですねそうですねと、今度は頷きながら全部聞きつつ、心の中でほっとひと息。
普段は鋭いほどいろいろ見透かしてくるくせに、
大好物が絡んだお隣さんはごく普通の面白い人だ。
用意された箸をようやく取って、私も一口。
うん、確かに、なかなか美味しい。
むぐむぐと口を動かす横で、
風鈴がちりんと鳴る。
砂肝トークは間断なくまだ続いて、気がつけば私もちょこちょことお皿へ箸を伸ばしていた。
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