そしてね…

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そしてね…

最後になるが、我ら「隙間の妖精さん」たちについて補足をしておこう。 我らの歴史はおそらく皆さんが思っているよりも遥かに長い。 日本神話の「天岩戸(あまのいわと)伝説」をご存知であろうか?太陽の神・天照大神(あまてらすおおかみ)が引きこもる話である。 まだ神々がこの地にて生活をしていた時の神話であるが、実はこれらの神話は実際に起きた話である。ただ、昔過ぎて実証出来ないだけだ。 さて、この天岩戸伝説だが、最終的に賑やかな外が気になった太陽神が岩戸の隙間からちらりと顔を出しそこを他の神々が引きずり出すというちからわざで幕を閉じる。 実はこの時、岩戸に引きこもっていたのは太陽神だけではなかった。太陽神以外は見向きもされず、岩戸に引きこもったままであったのだ。 つまり、この残されたものたちが我らの始まりである。 「引きこもり組」というのもなんなので、このまま「妖精さん」と呼んで欲しい。 つまり、我らは神の下っぱというわけである。見向きもされなかったが、下っぱといえども神の端くれなのだ。 そして、小隅さんは本当にいい目、観察力を持っていた。 これまでの話では、人が隙間を覗き込むように言ったかもしれない。実際は何かわいわいやっている人が気になって、我らの方が興味本意に隙間の内側から外であるそちらの様子を覗きこんでいるのである。 小隅さんは覗いている我らの視線に気づいていたのだ。 更にもうひとつ。 小隅さんはなかなかにいい才能を持っていた。我らに好かれるという才能である。 彼の最期はアレではあったが、我らに好かれていた故に死後隙間の住人となったのだ。 小隅さんは今では、立派に「隙間の住人」としてこの国を守る神のひとりとなっているのだ。
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