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独白
もう何十年と付き合ってきたんだから、決して相性が悪いって事ではないと思う。
馴れ合いっていうのとも違うよな。言ってみれば“一緒にいるのが疲れた”？
おいおい、そりゃあないだろ。俺にはおまえしかいないんだし、おまえだって──そうだよな？
え、もしかして違うの？
俺の片想い？
いやいや、ないわー。それこそないわー。だって俺たち一心同体じゃん。ずっと一緒にやってきたじゃん。それをさー……
ぅふぉおおっ。
……いや、痛くはないよ？ 痛くはないんだけどね。
ふふぉおっ。
痛くはないんだけど、なんつうかそれ……イライラす──あああゴメンなんでもない。なんでもないよ。
……あのさ。
悪いとこあったら、俺、謝るからさ。機嫌なおしてよ。
あ、バナナ。
バナナ食うか？ 乾燥させたヤツじゃなくて、ちゃんとした、普通の。おまえバナナ好きだもんな。
きのう脂っこいもの食い過ぎた事も謝るからさあ。もう食わない。脂絶ちする。誓う。お菓子もほどほどにする。
できるって。禁煙だってしたじゃん。もう１年ちかく吸ってないよ？ 立派だな俺。
だからさー……
ふおぉう。
いや、だからね、
ぶふふぅ。
君のそういうとこね。リズム感ないとこ。前はちゃんとあったのにさー。知ってる？ 今ゼロだよ、ゼロ。
ぶっちゃけね。
君のリズム感が、普通よりないなーって思ったの、俺が高校生の時からなんだ。そのうち良くなるだろって気にしてなかったけどさ。今なんかもう、しょっちゅうじゃん。いっつも変な時に変なリズム刻むじゃん。俺そういう、きちんとしてないとこが大っ嫌いなんだよね。
……あー。
ごめん、言い過ぎた。
………。
なあ、頼むよ。
来月には子ども生まれんだよ。待望の第一子なんだよ。女の子なんだよ。俺まだ名前決めらんなくてさー。その子が一生背負ってくもんだって思ったら、安易に決めらんなくて。
だからもうちょっと。
もうちょっとだけ、頑張ってくれよ、
俺の心臓。
[了]
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