”息子”

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”息子”

僕は子供の頃、野菜がきらいだった だから母が毎日のように、おやつ代わりにつくるかぼちゃのスープも、 季節によって食材が変わり、好物のかぼちゃが2つ入っているとはいえ、 苦手なことに変わりはなかった でも僕は知っていたんだ、母が僕のために、どれだけ苦労しているか それに、優しい甘さで全てを包むスープの味はどこか母に似ていて、 気づけば、毎日のスープがすっかり楽しみになっていた 「ただいま」 「おかえり、おなかすいたでしょう、はい、かぼちゃのスープ。」 風邪をひいた日も、喧嘩した日も、親子2人で向き合って食べる かぼちゃのスープは僕たちの大切な日常だった おかげで僕は野菜嫌いを克服し、いつからか、料理もできるようになったけど 今でも実家に帰りたくなるときは、きまって、あのスープが食べたくなる 週末、久しぶりに帰ろうかな。 「ただいま。」 「おかえり、スープできてるわよ」
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