25人が本棚に入れています
本棚に追加
「そりゃ、もう今年で三年目ですから!お菊さんにも教えてもらいましたし」
「最近はお茶ひっくり返したりしなくなったしね」
それって前はしてたってこと?いや、確かに事実だけど!
「わざわざ今言わなくてもいいでしょ!雅也の馬鹿っ!」
クルッと後ろを振り返ると、ニヤニヤしている雅也が。
「いや、だって事実じゃん」
はい、そうですね事実ですよ。はい。
そして、私のことを見下ろすのはやめなさい。
「まぁ、今も時々やってるらしいけど?」
またニヤニヤニヤニヤ。くそぅ、こいつ無駄に背が高いからって偉そうに。
江戸時代の人って背が低いんじゃなかったっけ?
・・・でも権兵衛さんの息子だから、当然といえば当然か。
「みたらし三本お願いします」
睨みつけたまま言ってやる。
「分かった」
私が睨んだ事も無視して、すぐに動きだす。
雅也は菊乃屋のことが絡むと人が変わったように真剣になる。
キッと引き締まった顔は、とてもじゃないけど十五才には見えない。
・・・あれ?私よりも年下だよね?二つしか違わないけど、さぁ・・・。
でも、この"菊乃屋"の跡取り息子として、頑張ってるのはよく分かる。
それに、この権兵衛さんの後を継ぐから。
想像できないくらいプレッシャーがすごいんだと思う。
一気に張り詰めた板間の空気を壊さないように、そうっと抜けだした。
最初のコメントを投稿しよう!