死神さんの預け物

3/42
前へ
/42ページ
次へ
「そりゃ、もう今年で三年目ですから!お菊さんにも教えてもらいましたし」 「最近はお茶ひっくり返したりしなくなったしね」 それって前はしてたってこと?いや、確かに事実だけど! 「わざわざ今言わなくてもいいでしょ!雅也の馬鹿っ!」 クルッと後ろを振り返ると、ニヤニヤしている雅也が。 「いや、だって事実じゃん」 はい、そうですね事実ですよ。はい。 そして、私のことを見下ろすのはやめなさい。 「まぁ、今も時々やってるらしいけど?」 またニヤニヤニヤニヤ。くそぅ、こいつ無駄に背が高いからって偉そうに。 江戸時代の人って背が低いんじゃなかったっけ? ・・・でも権兵衛さんの息子だから、当然といえば当然か。 「みたらし三本お願いします」 睨みつけたまま言ってやる。 「分かった」 私が睨んだ事も無視して、すぐに動きだす。 雅也は菊乃屋のことが絡むと人が変わったように真剣になる。 キッと引き締まった顔は、とてもじゃないけど十五才には見えない。 ・・・あれ?私よりも年下だよね?二つしか違わないけど、さぁ・・・。 でも、この"菊乃屋"の跡取り息子として、頑張ってるのはよく分かる。 それに、この権兵衛さんの後を継ぐから。 想像できないくらいプレッシャーがすごいんだと思う。 一気に張り詰めた板間の空気を壊さないように、そうっと抜けだした。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加