死神さんの預け物

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*** 「やっと途切れた・・・」 今日は暖かかったからか、お客さんがいつもの倍は来た。 お客さんが多いのはありがたいけど・・・。そんな一度に、何人も注文なんて聞けない。聖徳太子じゃあるまいし。 「うぅ・・・。肩と足痛い」 たすき掛けって、いくらやっても慣れるもんじゃない。ヘタに動けば袖がずり落ちてくる。着物姿も慣れたは慣れたけど、やっぱり動きにくい。 あぁ、Tシャツとジーンズが懐かしい。 いや、ジャージの方が動きやすいかな。  「あらあら、春ちゃん。顔に疲れたって書いてあるよ?」「えっ、本当ですか!?」 客商売で疲れた顔は厳禁。いつもニコニコ愛想良く。 お客さんがいてもいなくても、疲れた顔はダメ。 それが口癖のお菊さん。今も笑ってはいるけど、目が・・・。直視できません。 「まぁ、これから店閉めようと思ってた所だしねぇ。次からは気をつけてね」 「はい・・・」 ふふ、と完璧な笑みを浮かべてる姿は、四十路には見えないほどきれいで。 黒目がちで、柔らかな目元に真っ白な頬。小さな唇。羨ましい、の一言。 ちなみに、"菊乃屋"はお菊さんの名前からとったらしい。
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