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ここはB区。
AM7:00
云話事帝都マンション 34階。
矢田辺 雷蔵は、6時に起床したというのに、未だノロノロと身支度をしていた。アンドロイドのマルカとアンジェは心配げな顔で、矢多辺の着替えと身支度を手伝っていた。
矢多辺は気が滅入っていたのだ。今日から新しいアンドロイド製造業のベンチャー企業へ訪問するのだが、可能性は少ないのだ。
「ヨハ……」
ヨハの規格外の頭部は一年前のレースの試合で壊れてしまった。矢多辺は修理をどうしてもしてやりたかった。多数の企業へとヨハの修理を依頼したが、いずれも直せなかった。
アンジェがテレビを点けた。
「ハイッ。云話事町TVッスね。今日はB区の中央区のピアノ・コンクールへと来ています。由緒正しい。あのラフマニノフの奏者を多数輩出させた。B区カララン・クリスタル・パレスです。今日の目玉はなんてったって……なんでしょう? すいませんねー。私はクラシックはよく知りません。演歌は好きですが」
美人のアナウンサーの有田は、会場で一人マイクを片手に辺りを探している。そう、藤元がいないのだ。
実は藤元は女湯を覗いたという疑惑で、現在逃亡中なのだ。真偽は定かではないが、必ずこのことは闇に葬られるだろう。
「あ! もうすでに始まっていますね!」
演奏者はすでに会場の壇上にあがりピアノの前に座っていた。
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