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演奏者は痩せすぎで、神経質そうなその顔は極度の緊張のためか、かなり青白い色に近い。
「皆さん、それでは貴重な演奏を少しだけ聞いてみましょうね。滅多にない機会でしょうから。せっかくですしね……この番組って、いつもこんななんですよ。地元や有名なところのおいしいところだけを放送させて頂いてます」
有田がそういうと、神経質そうな演奏者の演奏が始まった。
演奏者は思い切り鍵盤を叩いた。トンー、と音に始まる美しい音色が奏でられた。
審査員は皆、驚きを隠せないほどの。耳を潤す美しい音色に酔いしれ、演奏者は審査基準を遥かに上回る高得点を獲得したかのようだった。
しかし、演奏中。突然、鍵盤が落ちて派手な音が轟いた。
「これも演出でしょうか?!」
有田はことのほか目を見張っている。
演奏者は曲を弾き終わる前に悶絶した。
後は、のたうち回るのみ。
呆気にとられた審査員は皆、一斉に得点を点けだした。
「10点、10点、10点、10点……おお! 出るか出るか……マイナス100点!! はい! 残念でしたー! 演奏者の方。もうこのコンクールには来ないといった顔をしてますねー。はい、お疲れ様でした。番組の途中ですが私ももう帰ります。ハイッ! 云話事町TVでした!」
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