紺色の傘と先輩と

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僕は一週間、テストの答えよりも真面目に考えた。 授業中に先生に何度も叱られてしまったほどだ。 親友にも一応聞いてみたが知らないというし、部室(いや、同好会だから会室かな?)にも言って先輩以外の先輩に聞いても「知らない」と首を振られるだけだった。 そして。 一週間後。 朝、校門を抜けた僕の目の前に先輩がやって来た。 「あの、悩んでいるようだからヒントをあげます」 「せせせ先輩! ありがとうございます!」 「う、うん。君も雨男なんですよね? わたしも生まれて一度も雨を見たことがない晴女なんです」 「は、はい……?」 「わたしの怖いものはなーんだ?」 最後に茶目っ気たっぷりにそう言った先輩は小走りに去っていった。 紺色の傘を持つ先輩を見たら、答えがわかった気がした。 「たのもー!」 「新入生、うるさい」 「すすすすみません!」 ポニーテール先輩に一蹴され僕は縮み上がった。 こういう時は「たのもー!」が礼儀じゃないんだっけ? あれ、おかしいな。 それはともかく、と僕は心の中で呟く。 「あの、先輩……晴女の先輩がいな」 「その前に、わたくしたちの話を聞きなさいですわ」 ですわ、で誤魔化しているけど命令されていた。 それに話を遮られているし。 「あの子……水無月は雨も見たことがないし、心から泣いたこともないのですわ」 「ま、嘘泣きとまでは言わないけど、本当に溢れてしまったような涙。それがないんだ」 「さて、でもあの子は一度だけ泣いたことがある。勿論心から。さて、いーつだ?」 とポニテ先輩は締めくくる。 最後の字面だけは可愛いけど、かなりの低音で、目力もすごいからカツアゲされている気分だ。 でも、僕には答えがわかっていた。 多分、お化けが怖いのと同じ理由。 「雨が降ったのを見たとき、じゃないですか?」 その時、僕が開けたままにしていたドアから先輩が現れた。 紺色の傘を持って。 「正解です、何でわかったんですか?」
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