紺色の傘と先輩と

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僕は卒業式も入学式も遠足も体育祭も何もかもすべて雨だった。 てるてる坊主を作ったりはしてみたが、効果なし。 また僕のせいで雨が降るんじゃないかと怖かった。 先輩は雨を見たことがないと言い切るほどの晴女だ。 勿論、先輩が学校に来ていた一週間は晴れていた。 隣の町は豪雨の日もあったのに。 普通、人が傘を持つのは雨に濡れないため。 でも、先輩は雨に濡れることがない。 ポニテ先輩たちの話では一回だけ、雨を見たことがあったということだろう。 その時は、心から泣いたらしい。 つまり、先輩は見たことがない雨が怖いのでは? 子供は見たことがないお化けを怖がる。 食わず嫌いとかもあるし。 まあ、理由は後からのこじつけなんだけど。 先輩は雨が怖いから傘を持っている。雨に備えて。 それが僕の出した答えだった。 「……と考えました」 「すごい。正解です」 先輩の心から称えたような笑みを見れただけで一週間の僕は報われた気がした。 「んじゃ、入部届け書けよ」 「は、はい!」 「新入生くん、わたくしたちの同好会へようこそ、ですわ」 今思えば、雨が降らないためのおまじないとか、実は母の形見とか、そんなことだったのかもしれない。 でも、一週間考え続けた僕の努力を認めて、入れてくれたのかもしれない。 「どうぞ、実家から届いた菓子ですわ」 と、ツインテの部長。 「おう、一個いただき!」 と、ポニテの生徒会副会長(ちなみに、同好会には入っていなかったらしい。我が物顔なのに)。 「俺も一個もらう」 と、無愛想なイケメン副部長。 そして。 「あの、わたしも一個いいですか?」 僕の愛しき先輩と。 僕は何だか事件みたいなものに巻き込まれてしまうけど、それでも下心で入った同好会に愛着を感じ始めていた。 これは、僕がそんなこんなで入った 『天気・占い同好会』 のお話。 はじまりはじまり。
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