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横浜スタジアム
その夜の横浜スタジアム。
スタンドから見える高層ビル群を夜の藍色が包む頃。
試合は5回の裏が終了し、グラウンド整備の時間になった。
フィールドにベイスターズのマスコットのDBスターマンと、チアリーダーのdianaが登場してパフォーマンスを行なっている最中、スタジアムのカメラは客席をとらえ、応援ユニフォームに身を包んだファンたちを大型の電光掲示板に映し出していた。
映し出されるのは、ベイスターズファンだけとは限らない。
ビジターチームのファンでも、タオルやボードを掲げて熱心に応援しているファンも同様にスタジアムカメラにとらえられる。
今夜も、赤いユニフォームに身を包み、お手製の応援ボードらしきものを胸の前に掲げたカープファンの女の子が、横浜スタジアムの電光掲示板に映し出された。
よく見ると、応援ボードと見えたものはスケッチブックのようだ。
赤いユニフォームには、同じ色の赤いフードがついていて、女の子は目深にそれを被っている。顔はよく見えない。
ぼくはここで、あれっ?おかしいな、と思った。
思いつきでいろいろと変わったグッズを出すことで知られるカープ球団だが、フード付きのユニフォームなどあっただろうか?
そう思って目を凝らして見ると、それがフードではないことに気づいた。
あれは、頭巾だ。赤い頭巾だ。
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