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国立西洋美術館
腑に落ちないままカープの取材をする日々が続き、とうとう7月26日になった。
今日からカープは東京で6連戦。ここ数年で関東圏にもファンが増えたおかげで、東京の球場でもスタンドの半分くらいは真っ赤に染まる。
23日から始まったピカソ展も、怪盗赤ずきんちゃんが狙っているという話題性もともなってか、連日6000人以上の観客を動員するという大賑わいを見せている。
ぼくはこの期間に怪盗赤ずきんちゃんが動くと見て、連日上野と球場とを行ったり来たりしていた。
当たりをつけていたのは午前中である。夜はナイターがあるため、ぼくも昼過ぎには球場に入るからだ。
警察は厳戒態勢をとり、そこかしこに警官の姿が見られる。まるで東京中の警察官が上野公園に集まったかのようだった。
国立西洋美術館の入り口では、厳重な持ち物チェックが行われている。
ぼくも展覧会のチケットを買って館内に入ってみたが、人がいっぱいで、お目当ての赤の時代は、他人の頭越しにチラッとしか見ることができなかった。
ぼくは正直言ってがっかりしてしまった。これなら、パンフレットに載っている、小さな写真のほうがまだマシではないか。
そもそも、今回展示されている作品は、10号サイズほどの小さなキャンバスに描かれたもので、おまけにほとんど赤い絵の具を中止としているせいで、遠くから見ても、真っ赤なプラカードにしか見えない。
近くまで寄ってみてようやく、そこに何人かの人物が描かれていることがわかるというものだ。
それでも、ピカソ作の、世界で10点しかないうちのひとつというだけで、時価数千億とも言われる値段がついている。
やれやれ。東京ドームの一杯800円のビールが安く感じるぜ。
それにしても、こんなにたくさんの人がいては、いくら怪盗赤ずきんちゃんといえども、昼間にこれを盗み出すのは不可能であろう。
と考えると、犯行は夜に行われるのかと思うが、ぼくは午前中にしか上野にくることができない。
今朝も早起きしてここまで来たはいいけれど、ナイター取材の次の日は、できればもう少し寝ていたいものだ。
神宮球場に行く道すがら、ぼくはありそうな可能性をいろいろと考えてみた。
あの人混みの中で犯行を行うのは不可能だ。だとしたら、一度観客を外に出さねばならない。
例えば、館内で火事を起こすとか。それなら、美術館側は客を外に出すだろう。誘導は中にいる警官が行えば、混乱も最小限に抑えられる。
しかし、それだと、自動防火システムが働いて、絵に近づくこと自体が不可能になる。
仮に近づけたとしても、どうやって運び出すのだ?
むしろその方が大問題ではないだろうか?
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