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大阪難波
大阪難波の商店街できつねうどんをすすっていると、ぼくの携帯に見知らぬ番号から着信があった。
ぼくは関東の出身だが、うどんのおつゆは関西風にかぎる。あの黄金色に透き通った昆布だしを、歯を使わなくても切れそうなやわらかな麺と一緒にのどの奥に流しこむのは、大阪出張の一番の楽しみだ。
であるから、どこかの誰かが唐突に遅めのランチをさえぎったことに対して、油揚が煮えくりかえる程度には腹が立った。
といっても、それほど重大なことではない。ぼくはもう丼の中のすべてのうどんをすすり終えてしまっていたし、じゅんわりと昆布だしがしゅみこんだアツアツのお揚げも、麺より先に胃袋におさめてしまっていた。
実際のところ、器の中には、昆布だしのおつゆが4分の1ばかり残っていただけである。
ぼくは東京では決してしない(それどころか、日本中どこでもしない)おつゆを飲み干すという行為を、今まさにしようとしているところだった。
ぼくはお出汁を飲み干すことをあきらめ、
「ごちそうさま」
と言って器を上げる。
こういうとき、大阪の人なら「おおきに」と言うのだろうが、「なんでやねん!」なら普通に言えるぼくも、「おおきに」となると緊張してしまうので、当たり障りのない返答で通している。
仕事がら、大阪出張は年に10日から2週間ほどある。
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