第一章

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 ちょうどその頃。ガルディア王国の首都ガルスにある宮殿では、新しい国王の即位にともなう戴冠式が行われていようとしていた。前国王のアフロスト7世の急死により、その王子がアフロスト8世として即位することになったのだ。弱冠十五歳での即位だった。  戴冠式は、宮殿の一番広い部屋で行われる。歴代の国王の戴冠式もこの部屋で行われた。それにふさわしく、豪華な装飾品や絵画が飾られている。部屋の中は、すでに王族や招待客であふれかえっている。女性たちはみな、きらびやかなドレスに身を包んでいる。  やがてファンファーレが鳴り響いた。そして新国王が姿を現した。人々は盛大な拍手で国王を迎えた。新しく国王となるアフロスト8世は、まだあどけなさが残っているが、凛とした風格をしている。父を亡くした後だけに、表情はかたい。ゆっくりとした足取りで、部屋の中央に向かって歩いていった。  まず司教が祈祷をした。部屋の中は静まり返り、厳かな空気に包まれた。国王は宣誓をした後、中央に置かれた玉座に腰を下ろした。そして司教は国王の体に聖水をかけた。  そしていよいよ、王冠が運ばれてきた。国王は玉座から立ち上がり、ひざまずいた。司教は王冠を手に取ると、国王の頭にかぶせた。部屋の中は割れんばかりの拍手に包まれた。  そんな新国王の様子を、不敵な笑みを浮かべながら見つめている人物がいた。国王の叔父にあたるフレディオである。国王のアフロスト8世がまだ若いため、彼が後見人となったのだ。事実上、国の実権を握ったことになる。そんなフレディオの見守る中、アフロスト8世は国王としての人生を歩み始めた。
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