第二章

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 ミレーユが目をさましたのは、その日の夕方だった。いつもとは違う目ざめだった。  ミレーユは、そこが自分の家の寝室だということに気づいた。それほど広くはない部屋に、ベッドとテーブル、たんすなどが置いてあるだけの寝室である。なぜここにいるのか、すぐにはわからなかった。泉でサソリにさされたことまでは憶えているが、そのあとのことは記憶にない。ベッドのすぐ横には、シモーヌが椅子に座って眠ったいた。  「シモーヌ……」ミレーユは驚いて声をあげた。その声でシモーヌが目をさました。  「ミレーユ! よかった!」シモーヌはそう言って、思わずミレーユに抱きついた。  「あなたがここに連れてきてくれたの?」  「え、うん」  「どうして私の家を知っていたの?」  「酒場のおばさんに教えてもらったの」  「ああ、マリね。え、あの店に何しに行ったの? 子供が行くような所じゃないのに」  「お医者さんを呼んでもらおうと思って……。お酒を飲む場所だとは思わなかったから」  「そう……。でも、あの店って、ガラの悪い人たちがいたでしょ。何かされなかった?」  シモーヌは少し悩んだが、余計なことは言わないほうがいいと思った。「ううん、何も」  「そう、よかった。とにかく、ありがとう。助かったわ」  「……私も、助けてもらったから」  「そうね。これでおあいこね」二人は顔を見合わせて笑った。  「それから、しばらくはここで一緒に暮らすことになると思うの。ちょっとせまいけど、我慢してね」  「うん」シモーヌは笑顔のまま答えた。これからもミレーユと一緒にいられるという気持ちが表情に表れていた。
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