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「どっちの愛崎さん?」
その日以来、ときどきそんな会話が聞こえる。
提出物の確認や、三木元さんのときみたいに来客など。
私はそう聞こえるたび怯えてしまう。
……比べられている気がする。
〝あっち〝とアゴで示す愛崎さんが
〝つまんね〝と息を吐く木村くんが
頭をちらつくのだ。
そしてどうやらそれは私だけらしい。
愛崎さんは名前を呼ばれても、どちらか迷うどころかほとんど反応すらしない。
その飄々とした態度が、余裕が、さらに私を惨めな気持ちにさせた。
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