私が嫌いな愛崎さん

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「五十川、ノート見せて」 「またかよ愛崎。お前授業聞いてねーのな」 「あはっ、まあいいじゃん」 ……ああ。まただ。 前の席で、愛崎さんと五十川くんが話している。 そりゃ隣だし、おしゃべりくらいはするだろう。 でも最近特に仲良くしている気がする。 それとも、私が五十川くんを意識するようになったからそう感じるのだろうか。 「……ね、五十川。ちょっと」 愛崎さんが声をひそめて話しかける。 「なんだよ」 「いいから。耳かして、耳」 「え」 五十川くんが愛崎さんに顔を寄せる。 二人の距離が近くなる。 (…やだ。やめて) でも、そんな言葉は誰にも届かない ……もし、私がいつもみたいに出席番号一番だったら。 愛崎さんがいなければ。 私が五十川くんの隣だった。 そうしたらああして話していたのは私だったかもしれない。 五十川くんと仲良くなれていたかもしれない。 ……なんて。 そんなわけない。 すぐにどもる私が話せるわけない。 男友達すらほとんどいないのに。 五十川くんと親しくなんかなれない。 そう。 私は愛崎さんみたいになれない。 名前だけ一緒で。でも全然違う。 こうして私だけが彼女を意識して。 彼女は私のことなどマトモに見もしない。 ……苦しい。 どうして彼女は愛崎さんなんだろう。 前の席。出席番号一番。 そこは私の場所だった。 私より美人で、目立って、上手に話せて どうしてそんなあなたが私の場所にいるの。
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