私が嫌いな愛崎さん

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「どうしたの、今の音?」 少し張りつめた声とドアの開く音。 学年主任の山田先生が、開いた扉から顔を覗かせる。 尻餅をついたままの私と側に立つ愛崎さんを見て、目を見開いた。 「愛崎さん!大丈夫?どうしたの!?」 今の愛崎さん、は私だろう。 私は慌てて立ち上がり『転んだだけです』と言った。 だが先生は納得しなかったようだ。 「転んでって……愛崎さん、あなたが何かしたとかじゃなくて?」 この愛崎さん、は私じゃない。 山田先生は私の側の愛崎さんに、訝るような視線を向けた。 それは普段私を見る目とは全く違っている。 ねっとりとした……もて余した相手に対するような、居心地の悪いもの。 当の愛崎さんはそれを当たり前のように受け止めていた。 普段からこういう風に見られているのだろうか。 「何かってなに、センセ?」 「なにって……」 「ちょっとしたケンカだよ。ねえ、愛崎サン?」 愛崎さんが、面倒くさそうに前髪をかきあげながら私に同意を求める。 山田先生はその態度に目をキッとつり上げた。 「ケンカって……真面目で大人しい愛崎さんがそんなことするわけないでしょう!愛崎さん、あなたが一方的に彼女に危害を加えたんじゃないの?」 「一方的?んなわけないじゃん。ていうか、真面目で大人しい人はケンカしないの?まじで?」 「愛崎さん!きちんと聞きなさい。あなた、それでなくてもいつも生活態度を注意されているでしょう!?あまり問題行動ばかり起こすと、保護者の方に直接お話させていただきますよ」 「は!?保護者って……あの女……母親は関係ないじゃん」 「そういう態度がいけないと言っているんです!どうして、同じ愛崎さんみたいに真面目にきちんと出来ないの!」
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