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それから何分かしたあと。
ふと、甘ったるい香りが鼻についた。
思わず顔をあげる。
今来たのだろうか。
前の席に女子が座っている。
スラッとした細い後ろ姿。
明るい茶髪のショートカット。
顔は見えないけれど、金に近い茶色の髪も。ピカピカ光る磨かれた長い爪も。どれもとてもきれい。
地味な私と対照的なタイプだ。
「おー、アンナ。また一緒じゃん」
前の席の愛崎さんに、男子生徒が近づいて話しかける。
ツンツンと短い金髪。耳にはいくつかのピアス。
「おはよ、カズ。ていうか、このクラス元B組多くね?」
「それ思った。しかもB組の中でもバカなのばっか」
「は?一番のバカはお前だろカズ。ていうか、一緒にすんな」
「あとブス多い」
「それもお前」
ゲラゲラという笑い声が響く。
別に私のことを笑っているわけじゃないのに、妙に居心地が悪い。
でもやっぱり同じ名字の愛崎さんがどんな人か気になって、目線だけ動かして前を見る。
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