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『カズ』と話している横顔。
スッと高い鼻に、くるんとカールした長い濃いまつ毛。ぷっくりした唇に塗られているのはリップでなく口紅。
香ってくる甘ったるい香水といい、とても同級生とは思えないほど大人びている……言ってしまえば派手だった。
でもただ派手なだけでなく、とても美しいなのも事実だ。
……私と全然違う。
やがて待ちわびた予鈴が教室に響き、クラスメイトたちはそれぞれ自分の席につく。
『カズ』もフラリと戻っていき、一人になった愛崎さんは前へと顔を戻す。
再び後ろ姿だけが私の目に入る。
私の前に、人がいる。
もちろんこれが全くの初めてというわけではない。
始業式のときは一番前だとしても、その後の席替えで色んな場所に座ってきた。
でもそうだとしても、出席番号一番にはそれなりの愛着があったのかもしれない。
前に誰もいない空間。
息がつまりそうな初めての場所で、そのことだけはずっと変わらなかったのに。
そこは私の場所なのに。
(……て、私なにを考えているんだろう)
愛崎さんが悪いわけでもないのに。
今、すごくイライラしていた。
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