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ホタルも。セミも。夏の間しか生きることができないという。彼らはその短い一生を、恋するために全てを費やす。子孫を残すため。そのためだけに、美しく光り、喧しく鳴く。
「あ。あぁあっ!!そこぉ。もっと突いてぇ!!」
もし。彼らが何かの間違いで、夏を過ぎても生きていることができたとしたら。セックスのためだけに生を受けた彼らは、きっと意味もなく性に耽るのだろう。
そう。私達みたいに。
「はぁ、はぁ…バックで強く突かれるのが一番好きなんだね、君は。」
恋が終わった私達は、あの日を思い出してはこうしてまた体を合わせている。今までのことは全て終わったことして、表面上は互いに新しい出会いを求めて別の道を歩み出した。にも関わらず、耐えきれなくなると切っても切れない体の関係をずるずると続けてしまっていた。
今日でもう何度目か数えられない程、あの時の狭い車で肌を合わせている。車内はとっくに二人の淫らな臭いがそこらじゅうに染み付いてしまい、二人の移動式セックス専用の小部屋と化していた。色んな体位を試し、時間や場所を変えては、意味のない性交に夢中になった。
今日は少し嫌なことがあったから、私が一番感じやすい両手首を後ろ手に掴んでのバック突きをお願いした。まだ赤い夕日が沈みきらない、公園の隅の駐車場で激しく車を揺らす。誰かに見られようがお構い無しと言わんばかりに、白昼堂々と性欲の解消に努めていた。
「やば、もう出る…うおぉおー!!」
「あぁあー!!気持ちぃいイくぅうー!!」
ケイの劣情の放出を対価に、激しいオーバードーズを全身で感じ取った私は体を大きくビクつかせてシートに倒れる。あの日から何度も重ねてきた成果なのか、私はより強く快感を感じる様に。ケイは何発も連続でやれるようになった。とはいえ、今日は調子が悪いのかケイはもうギブアップのようだった。
「はぁ。ごめん。今日はこれでおしまいだ。」
すっかり黒くなってしまった肉壺から剛棒を引き抜いたケイは、すかさず垂れる精液を床に落ちる前に拭き取る。このアフターケアをしっかりやってくれる所は今も昔も変わらない。
「でも、急にどうしたんだい。君の方から滅茶苦茶にして欲しいってお願いしてくるなんて。」
「…別に。ちょっと嫌なことがあっただけ。」
「ふーん。まぁ、俺も最近調子よくなくってさ。忙しいし、いい人も全然見つからないよ。」
私達の臭いが染み付いたこの車に乗っている以上、絶対に見つからないと思うけど、その言葉を口にせず飲み干す。私だけじゃなく、ケイも上手くいってないようで少し安心した。
「…ねぇ。あのさ。」
「…なんだい?」
「…ううん。なんでもない。疲れたから寝るね。」
思わず口にしかけた想いを言葉にしそうになり、それを抑える様に横になる。
『もう一度、やり直そう。』
体の相性だっていい。一度終わった仲だけど、お互いこの関係以上の相手が見つからない。ケイだってまだ私に気があるはず。次会った時は、しっかり言葉で伝えるんだ。
でも。この決意も何度目だろうか。お別れの時だってとうとう言い出せなかった私が、本当に伝えられるのだろうか。もう、分からないよ…
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