赤の証明。

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 少女は日給二千円と云う低賃金をものともせず、足しげく中年男のもとへと通って行った。…人目をはばかりながらではあるけれど。  そしてご飯を中年男に貰った金額以内に収めつつ、足りなくなってきたお米は自分の家から持ってきたりもした。  夏休み。  正確には通ってる学校が進学校で二学期制で、夏休みに当たる期間が盆休みの二週間のため、この短い夏休みの間に毎日朝から晩まで通えたのは二週間のうち一日おきの半分くらいしかなかった。  彼女はその期間も早朝アパートに寄ってはせっせと朝食を作り、食事を二人で済ますとアパートを出て学校に向かい、昼食時にアパートにやって来ては食事を手早く用意して学校に戻り、夕方アパートで夕食を作り二人で食事をしてお風呂や着替え、それにトイレの世話までして、まるで訪問介護のヘルパーさんようにして過ごしている。  もちろん、学校のない日は上記の文章から『学校に向かう・戻る』を引いて、キチンと朝から晩までアパートで過ごして仕事をこなしたあと、午後九時前か過ぎには帰宅する毎日を送っていた。  その間、中年男は少女の何気ない時に語気を強めた云い方で進める『病院行きなよ』を無視し続けている。  理由は、わからないままである。
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