赤の証明。

13/18
前へ
/18ページ
次へ
「ここ家賃もたぶん、相当安いはず」 少女は、常時布団で横になって過ごしている中年男に見咎められないように注意しながら、彼が居をわびしく構えるこの年季の入ったアパートの空き室案内をスマホで検索する。 「月々、共益費込みで二万八千円。やっす…」 見つけた不動産情報の賃貸物件の案内にアパート名を見つけ、調べた結果だった。 「終の棲家なのに寂しいね…」 本当にお金がないのに、あたしをなけなしのお金で雇うなんてどうかしてる。 だけれど、そんな男性に雇われた少女は感傷に囚われたり、涙を浮かべる。何てことはなかった。 それよりも好奇心が勝っていた。 そもそも、彼女は中年男の正確な年齢も名前すらも知らない。もちろん、中年男もまた少女の正確な名前も年齢も、高校何年生なのかもよく知らない。 ただ、両者の間に取り決められた奇妙な“契約”だけが存在しているのみだった。 少女は何とはなしに、それを探りたいと思った。上手くいくかは知らないけれど。。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加