赤の証明。

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「俺の正体探しはおしまいかい?」  用事がないときは、常に布団の中にいる中年男が少女に話しかけた。少女がぴんと背筋を伸ばした。 「オジさんて何者?」 「なにものでもないよ。ただの死にたがりのおっさんさ。そして君はそんな俺に低賃金で雇われた日雇い労働者。違うかい?」 「違わない…」  労働基準法なんのその。  アパートの階段下の地面に転がっていた中年男と会話して、少し面白味を感じて愉しそうに感じて、安すぎるにも程がある給料で握手して、見ず知らずのオジさんお世話係の契約を取り交わした。  理由は、なぜだかわからない。  もしかすると、もしかしてだけど。この日に日に動きが緩慢になっていく青ざめた中年男に、初対面でもしかしたら。。 「オジさんとセックスがしたい」  感情が制御できず、脳内ぐるぐるになった少女の口をついて出た言葉は、言った当人が困惑するくらいに激しく欲情的だった。
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