赤の証明。

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 一ヶ月前。  少女は女子高からバイト先に移動していた。  季節は夏真っ盛りの暑さがじんわり下降をはじめた頃合い。ちょうどその日は夏休みの補習最終日の夕方だった。  そんな夕暮れの時分、少女は徒歩で学校前の小径から大通りを抜けておよそ百メートルを歩き四つ角を左に曲がった。  曲がったらすぐに目の前に現れるのは、一定の年齢を経たものならどうしても懐かしさを感じざるを得ない昭和のノスタルジックな郷愁感に包まれて賑わう商店街が真っ直ぐのび、市鉄の駅の昇り口へと繋がっている。  少女は続々と人を呑み込み吐き出していく昇り口の階段を横目に見つつ、今夜の夕食の材料である割引された《ほっけの開き》を2尾、乾物屋で新聞紙に包んでもらい、隣のひなびた八百屋で特売品の《一山100円のミニトマト》と《見切り品の大根半分》を買い、水色のマイバックを出して傷めないようにそっと突っ込んだ。
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